LOGIN「あ、でもですね、このキャンプ場に全く影響が無いかといわれると、それはハイともいいえとも言えません」
「何故だい?」「それは、このキャンプ場へ来る人の中には、そいうモノたちの影響を受けやすい人もいるからです。仮にそういう人がそういうものを見てしまうと、恐怖に陥ったり魅入られたりして憑かれてしまう……なんて事が有るかもしれません」「どうすれば……」「それは今は何とも言えないです」 俺は申し訳なくなって頭を下げるが、公平さんも俺のせいではないと知っているから、あまり気にしなくても良いと声を掛けてくれる。でもやっぱり気にはなる様で表情は晴れないままだ。「何か解決できる方法があればいいのですけど……」『あるわよ?』「え!?」
ぼそっとこぼした俺の言葉に、それまで全く姿を見せる事の無かった母さんが反応した。
「どうしたの?」
俺がビクッとしたことに驚いた美穂さんが、心配そうに俺を見てくる。母さんの事をどう説明しようかと思ったのだが、伊織が自分についてくれている良い霊《ひと》が話をしてくれていると、何とか説明をしてくれて美穂さんもちょとだけ安心したようだ。「母さんどういう事?」
『出来るわよ? でも今直ぐにって事はできないわね』「どうやってやるのさ」『あなた達だけじゃ無理よ』「俺達だけ「それは関係ないと思います」「何故?」「そうですね……。人が住むには水場が大事です。ですから新たに人が住もうとすればそれは自然と水場の近くになると思います。という事はあの集落も水場が近いからあの場所へと人が住むようになったんだと思うんですよ。という事は川が有るからそこに集る様になったというのは少し違う様な気がします」「そうか……」 明らかにほっとして胸をなでおろす仕草をする公平さん。「あ、でもですね、このキャンプ場に全く影響が無いかといわれると、それはハイともいいえとも言えません」「何故だい?」「それは、このキャンプ場へ来る人の中には、そいうモノたちの影響を受けやすい人もいるからです。仮にそういう人がそういうものを見てしまうと、恐怖に陥ったり魅入られたりして憑かれてしまう……なんて事が有るかもしれません」「どうすれば……」「それは今は何とも言えないです」 俺は申し訳なくなって頭を下げるが、公平さんも俺のせいではないと知っているから、あまり気にしなくても良いと声を掛けてくれる。でもやっぱり気にはなる様で表情は晴れないままだ。「何か解決できる方法があればいいのですけど……」『あるわよ?』「え!?」 ぼそっとこぼした俺の言葉に、それまで全く姿を見せる事の無かった母さんが反応した。「どうしたの?」 俺がビクッとしたことに驚いた美穂さんが、心配そうに俺を見てくる。母さんの事をどう説明しようかと思ったのだが、伊織が自分についてくれている良い霊《ひと》が話をしてくれていると、何とか説明をしてくれて美穂さんもちょとだけ安心したようだ。「母さんどういう事?」『出来るわよ? でも今直ぐにって事はできないわね』「どうやってやるのさ」『あなた達だけじゃ無理よ』「俺達だけ
「母さん?」『え? 何かしら?』 ちょっとした違いなのだけど、俺にはソレがすぐにわかる。「何か知ってるの?」『……そうねぇ~……』 そこまでしてもとぼける母さんは答える気がないみたい。母さんの態度を見て俺はため息をついた。「それでその巫女さんは――」「すまんお待たせした!!」 俺が市川のおじさんにその話の先を聞こうとした時、後から合流する予定だった相馬さんと公平さん夫妻が到着し、その場にいた人たちと挨拶を始めた。 そうなると叔父さんもそちらへと挨拶をしに行くので、俺としていた話は中途半端になって終わる。「母さん?」『何よ?』――はぁ……まぁいいか……。「何でもない。さてと、俺も皆と話をしに行こうかな」『…………』 この時母さんが何を見ていたのかを俺は知らない。「で、きょうの事なんだけど、聞いても良いかな?」「はい勿論ですよ。その為にご一緒しましょうと声を掛けたのですから」「すまない。俺たちまでごちそうになっちまって……。後で何か持ってこなきゃな美穂」「そうですね」 夕食を食べながら、皆で一塊になって話を始める。 その中に混ざった公平さんご夫妻はとても申し訳なさそうにしながらも、一緒に夕飯を食べていた。 そして一息ついたところで、話題は今日集落へといって来た事へと移る。「その前に確認したいんですけど」「なんだい?」「その集落は今公平さん達が管理を任されているんですよね?」「任されているといえばそうなんだが、実質的にはこのキャンプ場の運営のついでに、あの集落の周辺に行くやつがいないかを監視するくらいしかしてないんだ」
『さぁもういいでしょ? さっさと戻りましょうね?』 暫くは鳥居の周辺を調べたりしていたが、今朝がたに俺と伊織が視たモノたちの痕跡を発見するどころか、本当にこの鳥居の先にそのモノ達が向かって行ったたのかさえ分からないまま、時間だけが経過していた。 それを見かねたのか、ただ単に飽きたのか、母さんが俺の側まで着てそんな提案をしてきた。――確かに。このままここにいても何も分からないかもしれないな。それにもうすぐ陽が落ちてくるから、戻るのならばここら辺が無難かもしれない……。 母さんの言っている事を考え、太陽の位置やキャンプ場までの距離を考慮すると、確かに戻るタイミング的にはちょうどいい。「みんな!!」 周囲で色々と探したり調べたりしている皆に向けて声を掛ける。「そろそろ時間的には戻らなくちゃいけない」「えぇ~? もうすこしだいじょうぶだよぉ~」 相馬さんが反論するが、俺は首を左右に振った。「相馬さんの言いたいことも、皆がこのまま何もなしで戻る事にあまりいい気持がしない事も理解はできる。理解はできるけど、俺達は何かが出来るからここに来たわけじゃないし、公平さんには確認してきて欲しいと頼まれただけだ。そうですよね平先生」「そうね……」 俺が話を平先生に振ると、先生も大きなため息をつきながらこくりと頷いた。「なら、その確認するという事はできたと判断して、ここは一旦戻ろう」「それが無難ね」「そうねぇ~。このままここにいても何もわからないものねぇ~」 理央さんと響子さんが理解を示す。「ほら夢乃!! 藤堂君が――部長がそう言ってるんだから戻るわよ!! それに公平さんに起こられるのは嫌でしょ?」「確かに叔父さんに怒られるのはいやだなぁ……。バイト代減らされちゃうかもしれないし……」 少しだけシュンとなりつつも、日暮さんの説得に渋々頷く相馬さん。
『今行かなくてもいいじゃない?』『ほらほらあっちに川があるし皆でいこうよ!!』『しんじぃ~!! こら!! 無視するな!!』『伊織ちゃんは分かってくれるわよね?』 などなど。とてつもなく俺の後頭部がうるさいのはお約束のようなものだ。皆でいくと決めたからこそ今誰もいない集落の中を歩いて向かっているのだけど、入る前からしぶっていた母さんが一人でブツブツと言っている。 俺しか聞こえないのであれば、完全に無視することもできたのだけど、俺の隣を歩く伊織も聞こえているという事で、母さんから話しかけられた伊織はどうしたらいいのか分からず凄く困っている表情をしながら、俺の服の袖を二、三度くいくいと引っ張ってきた。 その度に気にするなと伊織に言っているのだけど、母さんにはちょっと弱いところがある伊織はどちらからの板挟みになってあたふたしている。「母さん」『ん?ようやく話を聞く気になった?』 赤い鳥居が身近に迫って来た時、俺は立ち止まり母さんに話しかけた。「あの周辺に何かあるのか?」『え? ど、どどど……どうして?』「どうしてって……。まぁその反応を見ただけで分かったよ」 はぁ~っとため息をつきながら母さんの方を見る。母さんは何とも言えない表情をしながら、俺から視線をフイっと躱した。「で? 何があるの?」『…………』「言わなくてもいいけどね。俺たちもうすぐ着くし」『はぁ~。……とりあえず行くのであれば鳥居の前までにしなさい』「そこまでは安全って事?」『今は……ね』 |今《・》|は《・》という意味深な言葉を最後に、その場での俺と母さんの会話は終了した。 それ以上は聞いても何も話をしてくれないと分かっているので、俺は再び先に進む為歩き出す。 立ち止まった時
すると、それまでは仕事をしていたのだから当たり前だと思っていた、工事をしていた時に使用していたであろうスコップ類やツルハシ、そしてヘルメットや軍手、中には食べかけで止めたような弁当の様な箱と水筒が、プレハブ小屋の周辺に散らばっている様子目に映る。「確かに……ちょっと変だね」「でしょ?」 ぼそっとこぼした言葉を拾った理央さんが返事をした。「……とりあえず、プレハブ小屋をみてみよう」「そうだね……」 俺が先に歩き出すと、俺の言葉を追って伊織もまた一緒に歩き出す。そしてプレハブ小屋の窓部分から中を確認する。「うわぁ……」「荒らされてる? ううん。荒れてるって言った方がいいのかな?」 ふと漏らした言葉に続いて中を覗き込んだ日暮さんからも、俺が言葉にしなかった気持ちと同じセリフが漏れ聞こえた。「ねぇ!! 中に入れるみたいよ!!」「「え?」」 小屋の入り口の扉をガラガラと開けつつ相馬さんが俺達に向け声を上げた。「鍵は?」「え? 開いてたよ?」「…………」 俺と日暮さんは顔を見合わせて黙り込んだ。――こういうところは相馬さんらしくて羨ましいな……。 先に何かあるかもしれないという様な恐怖心を全く感じさせること無く、その先へと行動に移せるところは素直に凄いと思う。 せっかくドアが開いて中が見れるというので、俺はそのままドアから中に入ることなく周辺を警戒しつつも様子をうかがう為に顔だけ入れてみた。 窓から見たときにも思ったけど、中は工事に関係する書類やファイル、工事道具やホワイトボードに書かれた公示予定表などが、働いていた人が最後にここにいた時、そのままの様子で残され
朝食を食べ終え、皆で片づけを終えると俺達は話をしていた場所へ向かう事にした。 初めは俺達だけで行く事に難色を示していた公平さんだったが、相馬さんが俺達なら大丈夫だと、いやなんなら伊織がいれば何かあった時に対処できると、ちょっと無理やりな感じではあったけど公平さんを説き伏せた。 確かに伊織がいれば何かあった時には困らないかもしれない。特に伊織のあの力が有るのであれば、ある程度のモノ達はどうとでもなるような気がする。 ただ、ただ表立ってそう言われると、俺という存在が一緒にいる事の意味が無いような気がしてくる。――確かにその通りなんだけどさ……。 がっかりと項垂れる俺を伊織と響子さんが慰めてくれる。相馬さんだって悪気が有って言っているわけでは無い事くらい、ここまで一緒に行動するようになってから分かってきたつもりだ。 それにしても、やっぱり目の前でそういう事を言われるのには慣れていたつもりだけど、実は地味に気にはなっているのである。「さぁいきましょう!! ん? どうしたの藤堂君」「いや夢乃あなたねぇ……」 俺が気落ちしている事に気が付いた相馬さん。首を傾げて俺を見ているのを見て日暮さんがちょっと話が有るからと少し離れた所に連れて行った。 何やら日暮さんに注意されているようだけど、相馬さんからは「え? どうして?」などという言葉が漏れ聞こえてくるので、俺の事をやっぱりあまり気にしていなかったようだ。ただ日暮さんからの注意を受け、かなりへこまされたようで、二人での話合いから戻って来ると、俺にすっごく頭を何度も下げつつ謝られた。 気にしてないと一応の対応はとっておいたけど、どうやらそれが虚勢だという事は伊織にはお見通しだった様だ。「大丈夫?」「ん? あぁ伊織か」 林の中――あの俺達が見た者たちが向かって行った先にある木々の間を歩いて向かっていると、俺の隣スッと並んできて顔を覗きこむようにしながら伊織が話しか